御教誡十箇条(略解の詳解)51
(古神道・神理教を“本教”と記します)
第六条己の身の分限を忘るることなかれ1
1)分限は人・家・国の基礎
恐れ多いことですが、天皇陛下にも分限があるように、人間にはそれぞれ人としての分限があります。
親には親の・子には子の、又兄姉は兄姉で・弟妹は弟妹・農民・商人・職人と、皆それぞれに分限があるのです。
この分限を忘れると、家や国が乱れることになりますから、御教祖はこの誡めを作り置かれたのです。
2)分限の由来
分限は、後の世に人が頭で考えて決めたことではありません。
分限が定められたのは、神代の昔、天孫(=邇邇芸命)が地上にお降りになった時のことです。
:注天孫=天照皇大神の孫・天忍穂見命の嗣子。
加えて、その兄、饒速日命(物部・巫部の高祖)。
・神や神の理{=叡智}を見いだす方法
分限というような理の一つが導き出されるのは、天才と言われる、鋭いかも知れないけれど少人数の範囲の狭い理性ではありません。
言語や自然宗教のように、永い間幾百万の人によって取捨選択された、整合性のある大きな理性によって形作られた考え方です。
そこでこの分限も、天孫が神から伝えられた神の理(=叡智)の一つ、と受け止めるのです。
一人の天才が叡智の泉から汲み上げた理も、他の多くの凡才・秀才も汲み上げた理と、解釈の仕方等を併せ、照合されるべきなのです。
実際にそれらの習合と、打ち消し肯定し洗練され、今に残った考え方が神の心とされるのが、少なくとも神道教義の在り方です。
一人の天才が幾ら神と通じたと主張しても、それは小さな窓から真実を伺うようなもので、ほんの一部しか見えないものです。
神を何とか見よう・感じようとしても、吹雪や霧でホワイトアウトした先を見るようなものです。
人によって少し大きな窓や、フォグランプ(霧灯)のように若干先が見通せる天才でも、一人乃至は数人で、全ては見通せません。
多くの時代と人数の気付きを照合してこそ、莫大な窓と人間の持つ共有の力を以て、より真実に近づいて行けるのだと言えます。
本教では目の見えない人等が象を認識する方法に例えます。
一人は、鼻を触り太くて柔らかい筒のようだと感じ、一人は牙を堅く反り返った角笛、足を太い柱、胴体を壁のように感じることでしょう。
それ等が話しを擦り合わせ、象を認識してゆくように、目に見えない大自然や私たちと祖先の心の方向性・意思を感じ取るのです。
それでも全体像は把握しにくいものですが、神とその理についても全ては分からないにしても、ある程度は感じ取れることでしょう。
人は生きる以上、その意味を見い出したいと思うものですし、多くの人がそれにたどり着けず、もどかしい思いをしている事でしょう。
そこで諦めて投げやりに“神などいない”と思い込んでしまうのかも知れません。
最後は自分で決めるものですが、自分だけの小さな理性で判断するものでもありません。
少し人類・日本民族の精神文化を振り返れば、全てではなくとも、自然理解出来る事なのです。
そこでこうした歴史の流れを知っておけば、生きる意味についても、神と祖先をある程度意識することで、捉えられます。
そうしたものの見方は本教以外にも在るので、比較検討して選び取るのが良いでしょう。
まさに、青い鳥の童話のように、実は安心・喜びは、日本人にこそ最短距離にあるのです。
しかし恵まれた精神文化が伝わる日本でも、世界宗教やGHQの戦後教育に歪められ、すぐ側にある真実に気付けない人が多いのです。
:注GHQ=占領した日本の連合国の総司令部。
先ず戦争犯罪者として東条英機ら七名を死刑にします。見せしめの意味があったともされます。又、戦争を推し進しめた政治家達を公職追放します。
軍事産業に繋がる飛行機の製造や鉄の流通を厳しく管理し、農業主体を目指しますが、後に起こる冷戦や朝鮮戦争の影響で方針転換されます。
財閥を解体し、地主の土地を小作人に安く売却させます。民主化を進め、労働組合の結成を促し婦人参政権を承認し教育制度改革を実施します。
国民投票はされなかったものの、日本国憲法を制定し、戦争の放棄・国民主義が明記されます。
GHQは民主主義を具体的に伝える等、全てを否定するものではありません。
しかしその裏で、原爆や大都市への無差別爆撃での大量虐殺の肯定等、とんでもない洗脳もしています。
この不都合な真実への気付きを私たちは共有し、信者になって頂く為ではなく、人の本性として周囲の人へ伝えて行きたいものです。
多くの人に何が真実に近いか考えて頂きたく、少し本題から脱線した事をお詫びします。)
人は生まれながらにして、各々が天が定めた“分”というものを備えているのです。
ですから、天が定めた“分”を守る人の家は、朝日が昇るように栄えます。
反対に守らない人の家は、日暮れに向かって旅立ちするように昼も夜も衰え続けて、子孫がいなくなってしまうことになるのです。
3)分限を忘れた人1
古くは蘇我馬子や入鹿のように天造(=自然)ではなく人造の教えである仏教を日本に広めようとする人等がいました。
又、弓削道鏡のように自分が天皇に成り代わろうとしたり、幸徳秋水のように無政府主義を自由だから良しとする人等がいました。
:注幸徳秋水(傳次郎)=中江兆民に師事(=兆民の弟子)。社会・共産・無政府主義者。大逆事件で内山愚童等と共に処刑された12人の内の1人。
:注中江兆民=第1回衆議院総選挙の当選者。
自由民権運動の理論的指導者。ジャーナリスト。
社会契約論等を著したフランスの啓蒙思想家ジャン・ジャック・ルソーを日本に紹介。本名篤介、秋水も号であるが弟子の幸徳に譲渡。
:注大逆事件=天皇三后皇太子に対し危害を加え或いは加えんとしたる者は死刑に処す、とする旧刑法により、真の当該者4人に加えて、秋水等8人が捏造の冤罪(説が強い)で死刑になった事件。
計24人が死刑判決を受けるが残りの12人は明治天皇の「仁慈」により、無期に減刑。
:注内山愚童=宮大工の長男、曹洞宗の僧侶・住職。
日本社会党の二派・議会政策派を批判する直接行動(非暴力?革命)派。秋水等と同じく捏造の冤罪(説が強い)で死刑。 (3)つづく)