(おのず)(から)(みち) 311 管長 (かんなぎ)()(さち)(ひこ)

()(きょう)(かい)(じゅっ)()(じょう)((りゃっ)(かい)(しょう)(かい))17

                

   (古神道・神理教を“(ほん)(きょう)”と記します)

第一条神の心に(そむ)くことなかれ16(筆者付加)3

*本教の神の存在と死後の世界の結論2

 神と死後の世界の存在についてもう少し触れ、一条を終わります。

 先月まで、少数の天才宗教家の想像・創造による神と死後の世界の存在には、証拠は無く信じるしかないと述べました。

 一方村落・民族の叡智の集積である神道は、証拠こそ無いものの、永年の叡智の集積により、(あたか)も言語のように育ってきたものです。

 論理的・科学的に証明出来ないものの、少なくとも信じる他無いと無理矢理飲み込むものでもないことは、理解出来たと思います。

 ところで数学の世界では、0.90.990.999と小数点を増やして行くと、最後は1に行き着く、と数式で証明されるそうです。

 叡智の集積は、試行錯誤を繰り返しながらも、この小数点以下の9を、常に加え続けます。

 こじつけに感じられる向きもあるでしょうが、その1とはすなわち神と死後の世界の存在を、先月の結論1に補足出来ると考えます。

              (第一条終り)

 

第二条祖恩を忘るゝことなかれ1

1)祖恩とは

*神から祖先・自分・子孫への仕組みと役割

 祖恩というのは、ただ一般に言われる先祖の恩ばかりでなく、近くは親、遠くは自然なる大元の神に至る全てを指しています。

 当然のことながら、この世に生きる全ての生物には必ず親がいます。

 それは人も同じで、英雄や豪傑でも、大宗教家や知識人と(たた)えられる偉人でも、天地の間に偶然飛び出すことはありません。

 偉人の出現には、その時代の求めや家庭環境や、本人の意志や努力が不可欠です。

 その道筋を、本教では次のように(とら)えます。

 先ず大元の神が、その御心のままに、跡継ぎの道を私達の先祖に伝えます。

 次に、親は子を生み、神から伝えられた道を、またその子に伝えます。

 その子は、また子を生んで親となり、親は老いて祖父・祖母となります。

 そして祖父・祖母は、やがてこの世を去り、(うぶ)()(ねの)(かみ)となって自分の子孫を守ることを役割と同時に楽しみとします。

 こうして、神と祖先の徳と守りを戴き、本人の努力が加わり、世に偉人が出るのです。

 これが祖恩であり、この神理が理解出来れば、一般に恐れられる死も、それほど怖いものではなくなることでしょう。

 

*祖恩を忘れる(おこた)り(筆者付加)

 私達は、目に見えない先祖には敬意を持つものの、えてして、祖霊殿やお墓を放ったらかしにして、打ち忘れがちです。また、生きている祖先神である親や祖父母には、いくら世話になっていても、自分の力に自信が付けばその恩を忘れがちです。そして、うるさく邪魔者のように思ってしまうことがあります。

 そのまま縁遠くなってしまえば、悔やみきれない後悔と共に、大切な徳を失い、心も物も貧しい生活を送ることもあります。

*子育ち、親育ち(筆者付加)

 昔から「子を持って知る親の恩」という言葉があるように、子どもを持って、ようやく親の苦労や、子への情が分ります。

 また、言葉に尽しきれない、親の心遣いや恩恵が分るものです。また、子育てに一生懸命に取り組んでいる内に、気が付けば親自身が心の成長を遂げていた、ということもあります。子育ち、すなわち親育ちです。

 私達は、つい子どもや目下を「育ててやる」、等と上から見下ろしがちです。しかし、そうした気持ちでは、目下の成長どころか、自身が幼児返りをすることになります。

「育てさせて戴いている」ことを認識すれば、自分の心の成長も戴けるのです。

 身体の成長は20才位で止まりますが、心はどこまでも成長するものです。

 

*成功する人の条件(筆者付加)

 幸せや成功の喜びを感じられる人は、

@前向き=例えば、失敗も成功の元と考えられる。あきらめずに工夫をしながら、少しでも進む喜びを見いだせる。

A悪口を言わない=他人のせいにして終わらない。成功・失敗の原因を冷静に探り反省する。

B信仰を持っている=親と祖先と、その大元の神の徳を感じられる。

 以上の三つが揃った人です。

 また、お金持ちといっても、金額や財産の量ではなく、先ず心のお金持ち・余裕が大切です。そうした人は、

@好きな仕事をしていると思う。=懸命に工夫する内に、仕事の面白みに気付き、仕事が進むことに楽しみが湧いてくる。

A家族に認められていると思う。=家族に仕事の意義を認められ、感謝されていると感じる。

B沢山(例えば30人位)の人に、その仕事の社会的な役割や、自分の働きを認められていると思う。=時折触れる話ながら、働きの(ほん)(げん)(その言葉の持つ本来の意味)は、(はた)(周囲あるいは社会)を楽にする(役に立つ)です。

 家族や自分の為に稼ぐことだけでなく、それが同時に役立っている、また役立てようとする気持ちを持っている人です。

 心が神と祖先、すなわち陽の方に向ける先に在るのが祖恩です。

 

平成28年11月号  No.1233   2016-11