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                                                          2013−11

平成25年11月号  No.1197

        

                 自然(おのずから)の道(みち)

管長 巫部 祐彦

七罪の補足、慢2(倍返し)

 幸福への道程は、1.七罪を犯さない。
2.自分や先祖の罪をう。3.神気を戴く (長呼吸法)。4.八徳を積む。心掛けです。
   (古神道・神理教を“本教”と記します)

 

1.(しち)(ざい)の五番(たかぶり)の補足をします。

恥の文化

 先月、日本の美風とも言える恥の文化についてお話ししました。

 ()()(中国)(もん)(ぜん)に〈(こう)(がん)()()〉という言葉があります。他人に対する態度が厚かましく・恥を知らない様子、を指すようです。

 恥の文化が無ければ自分を(かえり)みる事も出来ません。恥があるから()(せい)出来るのです。

(つみ)()(くず)しと積み直し

 境内の幼稚園には()(じゃく)(長さの単位)に基づいた精密な積木があります。幼児達はごっこ遊びや物語等に添い、段々と複雑で大規模な作品に夢中になります。しかしその力作も、

 一つ(()())は一定の段階に達したと判断し

た教師の指導で、二つ(自発)に幼児達の話し

合いで、片付けられる事になります。

 ある意味人生は積木崩しと積み直しです。

 私達は世間の波風の中で、自分なりに積木を積むように・()()()を張るように、自分の人生・家庭・社会を(きず)き上げます。しかし、

()()(或いは自然)(こわ)される

 一つ(()())は、『これは上手く築けた!幸せだ』と思っても、病気災難や誤解悪意等、世間の波風に揺さぶられて(くず)れる事があります。

 そこで気持ちも落ち込むものの、元気が出せれば一から、又は途中から築き直すことを始めます。

 壊れたのは自他のせいではなく神(=教師)の指導、と考えるのは(いか)()でしょう?

 神戸や東日本の震災等のように、『壊されても又元気を出す事』が大切です。

 自分の思うように行かなくとも、意欲を無くし・ふて(くさ)れ・他人のせいにして仕事を(ほう)()し・仕返しをしても、何も進展しません。

 同情される事はあっても、本人の改心が無い限り最後は見放され、自分や祖先が折角貯めた徳を失うという最悪の事態を招きます。

 私達は世間で(だま)され(うら)まれる時がありますが、どう対応すべきでしょうか?

 昨今、テレビから『倍返し』という言葉が()()っているようですが、その場は気持ちが良いようでも上品に感じません。

 もし仕返しが成功し、神仏が下した等言い(つくろ)っても、既に正常の域を離れています。

 

 古今、世界から(しょう)(さん)された日本の心は、《(うそ)(うらみ)等の悪意に、(まこと)を以て(むく)》という点ではないでしょうか。日本人の特性を活かし、誠と徳の倍返しを心掛けたいものです。

 生きている限り、神祖から常に元気を戴き続けるのですから、それを信じて又粘り強く自分の目的を築き直す事です。

・自発的に(こわ)(原点に(かえ))

 二つ(自発)に、筆者はもっと質の高い人生の設計・構築について考える事があります。

 それは人生・積木を神・教師の指導によって壊すのでなく、(みずか)ら或いは仲間と話し合って壊すというか、見直し組み替えることです。

 自分や組織を組み替えるのに(ちゅう)(ちょ)しがちな理由は、貯めたものが消えて無くなる事への恐怖感です。しかし壊すのは、実は神に一旦お預けするという事で、お預けしている内に、もっと綺麗に整えられているものです。

 この場合の壊すというのは、原点に還ることです。今まで積み上げたものが消えるのではと不安に()られるものですが、不思議な事に必ず復旧します。

 又、神の力を戴き、家も改築する度に良くなるように、組み替え後は前以上の一層充実したものに生まれ変わるものです。

 本年6・7月号に『約1年で生物の分子が全て入れ替わる【(どう)(てき)(へい)(こう)】』の話をしました。

 他発であれ自発であれ、神と私達(神の(ぶん)(れい))はそのままでも、物質的には常に入れ替わっているというのは、教義にも矛盾しません。

 生きる力というのは、何時(くず)されても立ち直る・自分からでも崩して原点に立ち返る勇気と柔軟さを保つ意気込みです。

 いつでも『誠』を以て自分の貯めた財産・人格を崩す勇気を持ち、神祖と自分(神の(ぶん)(れい))の組み替え見直す力を信じたいものです。

 仕返しなどとはほど遠い、気高い世界です。

恥の効用・(たかぶり)と仕返し

 余談が長くなりましたが、平成十四年七月号で、長寿の人に教わったその秘訣・三つのカク(汗・文章・恥)を紹介した事があります。

 恥については、当時これを恐れず()(かん)に進む事と書きましたが、恥は自省の原動力ですから、これが本当の効用かも知れません。

 仕返し等は(たかぶり)の根元です。自分が間違う訳がないという考えに取り()かれると恥を忘れ自省が無くなります。そこで、

 自分と違う考えには、神に代わってお仕置きとなる事もあります。しかし、

 神の(きた)めを神に代わってしようというのは(たかぶり)で、返って自分が受ける事になります。

 テレビに(あお)られてもし倍返しで仕返しが出来ても、後で此を恥じ自省をすることです。

 そして自省をしたからには、もし仕返しした相手には返せなくとも、他の誰か又神や社会に奉仕で返すのが良いのです。