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                                                          2013−10

平成25年10月号  No.1196

        

                 自然(おのずから)の道(みち)

管長 巫部 祐彦

七罪の補足、怠・慢
 
 幸福への道程は、1.七罪を犯さない。
2.自分や先祖の罪をう。3.神気を戴く (長呼吸法)。4.八徳を積む。心掛けです。
   (古神道・神理教を“本教”と記します)

1.(しち)(ざい)の一番(おこたり)と、五番(たかぶり)の補足をします。

恥の文化

 先月、太宰治の小説『斜陽』から、思わず「あっ!」と声を出す場面があることについて述べました。その折り、

『取り返しのつかない又、言い訳が出来ない思い出は多くの皆様も体験のことでしょう。』

と筆者は言ったものの、中には、

『そんな事は一度もない。』という方も、又居られるかも知れません。まあ…、

 いつも(さけ)んでいる人も精神の安定さが(うたが)われますが、全く反省が無いという人も無神経や体調不良が疑われるのかも知れません。

 日本には古来『恥の文化』があり、(これ)を欧米の『罪の文化』と比べる学者がいました。

 第二次世界大戦前後のアメリカの文化人類学者、ルース・ベネディクトという女性です。

 日本人の精神を(たた)えているようで、実は欧米人の方が(すぐ)れていると言いたいようです。

『恥の文化』の対象は[世間の目]で、『罪の文化』の対象は[神の戒律]と説いています。

恥の文化の(こう)(ざい)

 ルースは、『恥の文化』は功罪相半ばするとし、先ず『功』は義理と人情を重んじ高潔な行動を取る所、とします。反面の『罪』は[世間の目]が変われば恥の感じ方が変わる所、としています。捕虜になった日本兵が欧米に協力する様子と、『二君に仕えず』の言葉に(もと)り平気で主君を替える武将達を論じています。

 彼女は(これ)を戦勝の理由としたかったのでしょうか。しかし、日本兵が欧米に協力したのは、欧米という[世間の目]より、日本人の誠実さだと言えます。又、戦国前半までの武将とそれ以降の武士意識の(へん)(せん)の歴史を知らないと、是等を混同してしまう事になります。

 戦国時代前半の小さな家に仕える武将は、西欧のそれと同じで、主君を評価する目が優先されたからです。馬鹿殿様では命が幾つあっても足りない時代があったのです。

 その後、(とう)()の末の一つの家に賭ける『二君に仕えず・忠義』の言葉が生きて来るのです。

 又本教では、[世間の目]より[神の目=(ことわり)]を意識する所は欧米以上と言えます。

 神は[世間の目]を通して見るとも言えますから、実は元は同じで、恥と感じるか罪と感じるかの違いだと、筆者は受け止めています。

 ルースの見方は正しいとは言えませんが、『恥の文化』が日本に伝わっている事は確かであり、その大部分は『功』なのです。

「あっ!」と声を出す程自分の恥を意識する人が、他人への思いやる心をより意識出来るのかもしれません。

(おこたり)の具現

 しかし、もし幾つも「あっ!」と声を出す場面を持っていても、(おこたり)(たかぶり)の波に(くつがえ)されると、どんな場面も忘れ去られます。

 筆者と同じ年で職種は違うものの境遇が似ている[お坊ちゃま・馬鹿殿]と陰口を言われた人がいますが、実は大変な苦労人でした。

 父が築き、父と義兄で(つぶ)した会社の精算を、銀行に(こく)使()されながら十数年を掛けて、一人の業者も泣かせずに無事に成し終えました。

 人生の最も有意義な時間を精算に消費し、精神的な負担も大きかったようですが、夜逃げも自殺もせず、退職者の世話までしました。

 しかし、いつも会う時には還暦前でありながら、今も人柄の良いお坊ちゃまです。

 筆者が出席する本教と同時期に成立した教派神道連合会は、各教団の本部と教会の在り方や気質等、似ている部分が多くあります。

 他の教派の人達との話題に『今或いは元大きな教会の子息は、良い環境で育っている割に、物腰や言葉使いが下品な人が多いという法則のようなもの』が上がることがあります。

 金持ち以上にちやほやされたから、との事です。勇気を(ふる)って(かえり)みらねばなりません。

『社会や家庭で乱暴・()(そん)な言葉や態度で応じる人程、上司や目上の言葉に弱く、いじけあきらめてしまう人が多い』と言います。又、

『社会や家庭で丁寧・親切に接する人程、上司や目上の()(べつ)(しっ)(せき)にも粘り強く、自分の思いを伝えられる人が多い』とも言います。

 上下、水平(上司・目上・部下・目下、同僚・家族)どちらの見方も大切ですが、心や目線は水平を元として展開するのが良いようです。

 (おこたり)(たかぶり)で気持ちの一ヶ所が(ゆる)めば、それは次々に(でん)()します。

 (もち)(ろん)(ゆる)む時も必要ですが、自分の緩みっぱなしの部分に気付かなければ、あっという間に前者に(おちい)ります。

 普段からの『(まこと)』を心掛けながら、常に神祖に罪の祓いを願い、自らを(おこたら)(たかぶら)ないよう点検し、後者を目指す意気込みが大切です。