背景色が選べます!


                                                          2012−8

平成24年8月号  No.1182

        

                 自然(おのずから)の道(みち)

管長 巫部 祐彦

七罪(幸福への道程1.)の解説F 怨(うらみ)

 幸福への道程は、1.七罪を犯さない。2.自分や先祖の犯した罪を祓う。3.長呼吸法で神気を戴く。4.八徳を積む。心掛けです。
   (古神道・神理教を“本教”と記します)

父との(けん)()(四十年前)

 ほとんどの人は、幼(3才頃)・少(1215才頃)期に反抗期を体験します。それは決して病気ではなく、心の成長・自我の発達の正常な過程です。しかし、周囲の親や大人による対応の仕方や本人の自覚が無ければ、長引き又、一生の傷になる事もあります。

 筆者は高校の時に父四代管長様に反抗したことを覚えています。何かと注意をする父に『()らん()世話!』と以前から思っていたことを口に出し、『なにを!』と目の前に迫って来た父と()み合ったのです。父は柔道の黒帯でしたから(つか)み方も堂に入っています。

 16才の私も必死で胸ぐらを掴み返しながら、当時46才の父の押す力の弱さに意外感と(いち)(まつ)(さび)しさを持ったものでした。

 とは言え、ここは一旦父の手を()(ほど)けば、その勢いでぶん(なぐ)ることが出来そうだ、と思いましたが、何となく遠慮があります。

 その時気付いたのは、父も今の形だと柔道の技で私をぶん投げることが出来るが、何となく遠慮しているな、ということでした。

『ぶん殴ったら父はどうするのだろう、ぶん投げられたら自分は逆上するのか…、』

 そんなことを多分互いに思っている内に、母がプロレスかボクシングのレフリーのように、飛び上がって割って入ったのでした。

天に向かって(つば)()

 私はそのまま外に出て、参道石段左奥の(のき)(した)で心を落ち着けようとしたのですが、何故か流れる涙を止めることが出来ませんでした。

 涙は体内の毒素を抜くようで、その後すっきりとして、色んな考えが()いてきました。

 何故涙が止まらなかったのだろう、自分はこれをどう消化すればよいのだろう、ということでした。先ず“天に向かって(つば)を吐く”という言葉が思い浮かびました。

 成り行きとはいえ、『親と(つか)み合い、あまつ

さえぶん(なぐ)ってやろうかと一度でも思ったことは(おそ)れ多いことだ』と恥じた事でした。

 相手が目上であろうが目下であろうが、人を嫌う・憎む・(うら)むというのは、まさに真上を向いて唾を吐く様なものです。

 物理の法則どおり、自分の吐いた唾は自分の顔に返ってきてかかり、一番気持ちの悪い思いをするのは自分です。

 物理の法則だけではなく、天や祖先からも、(さわ)り・お知らせ(その罪を教えようと病気・災難)を受けることとなるのです。

 その時は自分の未熟さには気付かないものの、親に手を上げようとした空しい心の動きに、涙が出たことに思い至りました。

(うらみ)((うらみ))

 (うらみ)は昨年14月号に(しょう)(じゅつ)しましたが、

『相手だけでなく、自分の地獄をもこの世に作る事』であり、七罪の中で最も重い罪です。

 (うらみ)の心に取り()かれれば、自分の心の目を曇らせます。自分の(うらみ)を人のせいにすると心が重くなり、神の国である()(わか)(みや)から離れ、()()の国に沈んで行くこととなります。自分の(うらみ)が相手を苦しめれば、相手や相手の祖先の(うらみ)を自分や子孫に受けることもあります。

 論争に勝ち結果を得たにしても、負けて結果を得られなかった相手からの(うらみ)も、避けるように考慮することが(かん)(よう)です。

『負けた相手が悪いので、怨まれてもこちらのせいではない』などと居直らず、相手の心情にも配慮しましょう。例えば、逃げ道を作る・別の道を用意する・条件を(ゆる)める等、工夫します。それでも尚かつ折り合いが付かない時は、自分の不徳と反省し『罪を憎んで人を憎まず』で、相手を怨まず(うと)まないことです。

 社会や人を怨むことは自分と子孫の罪となって返って来ます。怨まず(うと)まないと同時に相手を(いたわ)る余裕があれば、もし怨まれても解除を神に祈れば必ず通じます。

『自分の失敗は自分のせいで、成功は神と先祖と周囲のお陰』と有り難く受け取れば、必ずそこから上昇してゆくのです。

(うらみ)の祓い方・(くし)(みたま)(けん)(こう)(ろう)(えき)(いん)(とく)(八徳)

 (うらみ)を祓うには(くし)(みたま)の智恵を使い怨む相手を思いやり、怨み返すのではなく何を用意すれば良いか考えることです。又、冒頭4.八徳の内の次の三つを使います。体の(けん)(こう)は心の健康に(つな)がり、心身の(けん)(こう)を以て(ろう)(えき)を行い汗と共に自他の(うらみ)を祓い除くのです。

 又、人助けを気軽な習慣とし、その人の祖先からも感謝される(いん)(とく)を積みましょう。

『我が心清々しい』をいつも唱え、(うらみ)の心を()(さん)()(しょう)させ、大海のように少々の汚れも浄化する様な広い心持ちでいたいものです。