背景色が選べます!


                                                          2011−12

平成23年12月号 第1174号

        

自然(おのずから)(みち) 管長 巫部(かんなぎべ)(さち)(ひこ)

 本教伝導の心得-大祭教話から

(古神道・神理教を“本教(ほんきょう)”と記します)

 

宗教と道徳・法律の関係

 (うつし)()の決め事である法律の基本は心の持ち方である道徳であり、道徳の原点は(かくり)()とも通じた心の持ち方である信仰です。

 信仰を守る為に道徳があり、道徳を守る為に法律があるとも言えます。

 信仰は宗派により、その道徳・法律に及ぼす影響は幅や深みに違いがあります。

 例えば飲酒を禁止するイスラム教は、道徳としてもそれを守ることから、法律も飲酒に伴う犯罪には厳しくなります。

 又神が土から人を創ったと信じるキリスト教やユダヤ教は、生体移植等には愛の(けん)(げん)として法律も(ゆる)く考えられることでしょう。

 又世の無常を説く仏教は、法律の規定を強く必要とは考えない向きもあるようです。

 神道は(むさぼ)りにならなければ欲は繁栄と生きる為の意欲であり、人は神の子孫であり、この(うつし)()(かみ)(のよ)にしようと考えます。

 法律もこれに添って、楽しく充実した人生を送れるように、神に戴いた心身を大切に、世界の平和を築く為の法律が(みちび)かれます。

 それらの違いはあっても余程おかしなものでない限り、宗教にはその目的に共通性があります。それは(うつし)()の平和と、(かくり)()とも通じた安心即ち(れい)(こん)の安定にあるのです。

 安心と平和の為に道徳があり、道徳を実現する為に法律があるともいえますが、その根本は人類共通のこうした信仰心なのです。

 

宗教と教育・社会福祉の関係

 宗教と道徳・法律と同じように、宗教と教育・社会福祉は考え方や実践の仕方について表裏一体の関係にあります。

 本教伝道の心得が境内にある神理幼稚園の教育の心得にそのまま(つな)がり、互いの良さを見直しながらも認識することが出来ます。

 宗教・教育の用法は別でも、両方を比べ合わせると面白いように考え方が一致します。

 16日の大祭でお配りした資料では両方を差し上げましたが、ここでは本教伝道の心得を中心に少し手を加えてお話しします。

本教伝導の心得

(すす)めるよりも分かち合う

 本教の伝導は、祈れば通じる・教義が整っているといって、奇跡を見せたり頭から教義を教え込んだりするものではありません。

 極端にいうと狂信的な行為や七罪等の反社会的言動以外は、信仰を勧めよう等という考え方を一旦外して、勧めるより毎日の悩みや喜びを隣人と分かち合って頂きたいものです。

 例えば七罪の“(うそ)”は“嘘も方便”等と考えて軽々しく使っていれば必ず()らされる ≠ニいうお知らせを戴くものです。

 こうしたものは見過ごさず指摘・教示をするべきですが、普段は教義に照らしてご自分の生活を楽しみ・隣人と良いところを見つけ合い・分かち合うことで充分です。

・モデル(見本)としての生活習慣を持つ

 勧める前に、教内は元より日常の家庭や社会生活で、一人前の幸せな社会人として生活することが大切です。それは教師・信徒のモデルとして、社会に貢献する事でもあります。

 自分が不幸せなのに他人の幸福を祈ってあげよう等おこがましい話ながら、悩みの無いのが悩み≠ニいう人は少数です。

 自分の幸福への工夫や本教教師との相談等、努力をしながら祈らせて頂くことです。

 教えを活かして大小の悩みをどう解消しようと()(しん)する内に、気が付けば本教人のモデルになっているようになりたいものです。

・本教人の本分

 人間が生来神から戴いた秩序感・正義感・自主性を信頼・尊重し、自他の罪を祓い生きる力を見出し認め、本教の手法を使って手助けし世に役立つ事が古神道・本教人の本分です。

 ここで述べたことは霊能力や教条教育を否定しているのではありません。その前に本教人としての基本且つ具体的な心構えが大切と認識した伝道を目指しているということです。

 その為にまず具体的に育てたい本教人の心掛けを、手法の一つとしてあげてみます。

@人の話しを聴く。(聞くことが相手の安心に繋がる。悪いものを吐き出して祓う。)

A集中して祈る。(心に広がりと深まりを形成する。)

B教義を理解し守る。(教義は生活に役立つ教え。社会生活以前の本教人の基本。)

C良い人間関係を作る。(他教や無信仰でさえ一旦受け入れ認める。寄り添う。)

D五感を使う豊かな感性。(色んな事に興味・関心を持ち、教養を広げる。)

 これらを少しづつでも進めて行けば必ず安心の境地を得、同時に他の()(はん)となるのです。


季節のことば
     小冬至 12月22日頃(今年も22日)

 冬至は二十四節気の一つで、夏至(今年は6月22日)に対極し、一年で一番昼が短く夜が長い日です。
 日の出と日の入りの方向が最も南寄りになります。
 お神籤で『凶』を引いて嫌がる人もいますが物は考えようで、冬至と同じくこれを境に陽が長くなり、運命も上昇に向かうのです。元気を出しましょう。
 冬至の三候の初候《乃東生ず》は〈夏の枯草が又芽を出す〉で、生命の誕生を連想させるように太陽の光が強まる悦びを感じます。二候《麋の角解く》は〈大鹿が角を落とす〉時期を言い、三候《雪の下に麦出る》は〈雪の下で麦が芽を出す〉となります。一見へたって感じられる冬至こそ、実は生の息吹が満ち貯まっているということです。
『季節の言葉』も今回で6周目になり、流石に月によっては選ぶ余裕が減ったので、今回で納めさせて頂きます。
 長い間おつきあい下さり、有り難うございました